未公開株詐欺に気をつけて

弁護士 向来 俊彦

1 ある日突然

 「株式投資に興味はございませんか」、「老後の備えは大丈夫ですか」、「有利な資産運用をご案内させていただいています」、こんな電話がかかってきたら要注意です。最近、一人暮らしの高齢者を狙った未公開株詐欺商法が横行しています。
 電話をかけてくる○○株式会社はそれなりに実体のある企業で、きれいなパンフレットや会社案内など非常に手のこんだ資料を用意し、ホームページなども見栄えのする立派なものがあって、一見すると、いかにも有望なベンチャー企業であり、株価が値上がりしそうな感じがします。

2 次々と電話が……

 そして、その○○株式会社とは別に、証券会社を名乗って「○○社や××社、△△社は有望ですよ。なかでも○○社の株式は値上がり確実ですから、お持ちでしたら高く買い取りますよ」といった電話があります。このとき、○○社1社だけならば不自然に聞こえるため、有名な企業の名前をいくつかあげて、そのなかに○○社の名前を織り交ぜるなど、やり方が周到です。さらに、複数の証券会社から電話があり「もし、○○社の株式をお持ちでしたら、是非うちに売って下さい。必ずほかよりも高く買いますから」などと言われることも少なくありません。
 半信半疑で、詐欺じゃないだろうかと調べようと思っても、巧妙に仕組まれていますので、判別は困難です。むしろ調べれば調べるほど本当の話ではないかと思えてきます。

3 ちょっと待って!

 しかし、よく考えてみてください。
 見ず知らずの人が、そのような儲け話を持ってきてくれるでしょうか。
 そんな確実に儲かる話であれば、その人自身が買うでしょうし、その人自身には購入資金がない場合であっても、赤の他人ではなく、親戚や親しい友人に紹介するでしょう。
 「他人を見れば詐欺師だと疑え」という極端な話ではありません。儲け話・おいしい話には注意が必要だということです。また、急いでお金を振り込ませようとするときも要注意です。振り込め詐欺にしても、未公開株詐欺にしても、誰かに相談される前に振り込ませるように仕向けますので、とにかく慌てさせ、焦らせます。たとえば「すごく人気があるので、今買わなければすぐに売り切れてしまいますよ」などと言って、その日のうちに代金を振り込ませようとします。
 一度詳しく話を聞いてしまうと、いったんは断っても執拗に勧誘の電話がかかってくるようになります。最初の段階できっぱりと断ることが大切です。また、資料を送ってもらうだけならばいいだろうと思って、安易に住所を教えると、突然訪ねてきたりします。何度も電話を受けたり、何度も訪問されたりするうちに、次第に断りづらくなったりもします。

4 二次被害も

 さらに、一度騙されると、顧客名簿が出回るためか、何度も同じような手口の勧誘電話がかかってきます。「損失を取り戻します」「株式を買い取ります」「弁護士を紹介します」等々いろいろなことを言われますが、結局、先にお金を払わなければなりません。いわゆる二次被害です。
 実は、詐欺の被害は、「私は大丈夫」と思っている人ほど被害に遭いやすいものです。相談に来られる方は、皆さん「自分は大丈夫だと思っていた。詐欺にひっかかるなんて他人事だと思っていた」とおっしゃいます。他人事だと思って油断していると、ひっかかってしまうわけです。儲け話・おいしい話には乗らない、怪しい電話はきっぱりと断る、お金を振り込む前に一言誰かに相談する、これが被害を防ぐポイントです。