仕組債とは、債券にスワップやオプションなどのデリバティブを組み込んだ証券です。これまで多くの投資家被害をもたらしたEB(他社株転換社債)や日経平均連動債が有名ですが、最近は為替連動型のPRDC債やFXターン債と呼ばれる仕組債が、個人や中小企業にまで販売されるようになり、多くの深刻な被害を出しています。
FXターン債とは、社債に高レバレッジをきかせたクーポンスワップとオプション取引を複雑に組み合わせたもので、為替が同じか円安に向かうと高クーポンをもらって円100%で早期償還されますが、円高に向かうとクーポンは減少し場合によりゼロになります。しかも元本は多くの場合30年間塩漬けになり、30年後の償還は外貨で行われるので為替変動により大きく元本割れするおそれがあります。
顧客の儲けには限界があるのに、顧客の損は非常に大きいものです。ところが30年塩漬け、かつ、30年後に外貨で償還というリスクは、素人には容易に理解できません。さらに購入後、お金が要りようになったり、判断の誤りに気づいてリスク回避をしようとしても、売却できない場合があり、仮に売却できても大きく値下がりしてしまいます。このように、実はとても危険な商品なのに、危険性がわかりにくく、逆に一見すると有利に見えるように仕組まれた商品なのです。
仕組債販売に錯誤無効が認められる!
弁護士 中嶋 弘
平成19年3月、野村證券は個人投資家(不動産会社社長)に5000万円の仕組債(FXターン債)を販売しました。その際、危険性を説明せず、かえって安定的で高利回りを確保できるかのように誤解させる説明をしました。私はこのような勧誘に納得できないと訴える投資家から依頼を受け、被害救済に取り組んできました。平成22年3月30日、大阪地裁で言い渡された判決は、仕組債の購入契約が錯誤無効であり、かつ、勧誘が不法行為にあたるというものでした。本判決は、金融商品販売における不当勧誘と意思表示理論との関係を掘り下げ、錯誤無効を認めたものであって、被害救済の観点から画期的なものです。また30年もの長期間拘束される為替連動型の仕組債について説明義務違反を認めた事例としても参考になると思いますので、ご紹介します。
仕組債・FXターン債とは
損害賠償と錯誤無効が認められた
判決は、野村證券による説明義務違反の不法行為を認め、損害賠償を命じました。さらに顧客がリスクを誤信していたことは、単なる動機にとどまらず、この商品を購入するという意思表示の内容になっていたとして、錯誤無効を認めました(双方控訴)。
金融商品は目に見えない権利関係の集合体であり、リスクとリターンを売買するものといえます。新種又は複雑な商品のリスクとリターンは、業者からの説明を頼りに理解するしかありません。デリバティブ関連商品は特にそう言えます。顧客は、業者からの説明によって商品を認識し、「買う」という投資判断をしています。したがって、金融商品のリスクやリターンそのものについて誤解があり、それが一般的に見て重要なもので、かつ、業者の不当な説明・勧誘に起因するときは、売買目的物について誤解があったと言え、錯誤無効が認められるのです。金融商品の特質に着目すれば、錯誤無効は、むしろ広く認められる余地があると言えるでしょう。
最近は、顧客が長期間拘束され、価格や条件設定が公正かどうかもわからない仕組債や通貨オプション、クーポンスワップなど、難解で怪しげなデリバティブ商品を売り付けられたという被害事例が増えています。これらの救済には、不法行為に基づく損害賠償に加えて、錯誤無効を主張することが有用です。本判決が被害救済を前進させるきっかけになることを期待しています。
金融商品は目に見えない権利関係の集合体であり、リスクとリターンを売買するものといえます。新種又は複雑な商品のリスクとリターンは、業者からの説明を頼りに理解するしかありません。デリバティブ関連商品は特にそう言えます。顧客は、業者からの説明によって商品を認識し、「買う」という投資判断をしています。したがって、金融商品のリスクやリターンそのものについて誤解があり、それが一般的に見て重要なもので、かつ、業者の不当な説明・勧誘に起因するときは、売買目的物について誤解があったと言え、錯誤無効が認められるのです。金融商品の特質に着目すれば、錯誤無効は、むしろ広く認められる余地があると言えるでしょう。
最近は、顧客が長期間拘束され、価格や条件設定が公正かどうかもわからない仕組債や通貨オプション、クーポンスワップなど、難解で怪しげなデリバティブ商品を売り付けられたという被害事例が増えています。これらの救済には、不法行為に基づく損害賠償に加えて、錯誤無効を主張することが有用です。本判決が被害救済を前進させるきっかけになることを期待しています。